目次EAGLEインデックス(1)


パターン図作成のテクニック (8)

ベタアース作成

ベタアースとは信号パターンや電源パターン以外の部分を接地(アース)で塗りつぶすことです。回路が高周波用の回路であったり、外部からのノイズによる影響を防ぐ場合などに使用します。プリント基板を手作業で作る場合には溶かす銅箔の量を少なくできるという効果もあります。
ベタアースのパターを描くのにはポリゴン機能を使います。ポリゴンは元々多角形のパターンを描く機能ですが、プリント基板の余白をパターンにする機能もあります。

回路図
今回、例として使用する回路は論理ICのインバータを使用したマルチバイブレータ回路です。





回路図を描く際、接地線の名称をGNDとしておきます。GNDでなければいけないということではないのですが、私が描いた回路図では接地にシンボルを使用しており、そのシンボルの名称をGNDにしているので、配線の名称も自動的にGNDになっています。この名称はポリゴンの名称に使用するので、回路図を描いた後、接地線の名称をInfoコマンドで確認しておきます。

Net Classとしては以下を設定しています。





ボード図
回路図を描いた後、ボードボタンを使用してボード図を作成します。

このボード図は部品の配置が終わり、名称の位置も調整した状態です。
まだ、パターンは描いていません。
ポリゴンの設定

ポリゴンボタンを押すと、アイコンバーに以下のようなアイコンが表示されます。このバーでポリゴンの属性を設定します。


配線面ポリゴンを描く面を指定します。1 は部品面側(赤茶色)、16 は配線面側(紺色)
曲げ角 多角形のポリゴンを作るときの角度を指定します。ベタアースの場合、設定0だけで描けます。
左側から
(設定0) 始点 -> 水平 -> 垂直 -> 終点
(設定1) 始点 -> 水平 -> 45度 -> 終点
(設定2) 始点 -> 終点 (直線)
(設定3) 始点 -> 45度 -> 水平 -> 終点
(設定4) 始点 -> 垂直 -> 水平 -> 終点
配線幅配線幅はポリゴンには関係ないように思えますが、この指定でポリゴンの細かさが変わります。通常は信号線と同じ程度がよいとのことです。設定単位はインチ。
塗りポリゴンをベタで塗るか、ハッチにするかを指定します。左がベタ、右がハッチです。
端子ポリゴンと同じ名称の配線に接続している端子の形状を残すかどうかの指定です。左(off)が残さない、右(on)が残す設定です。
余白ポリゴンを描く領域に余白が生じた場合、その領域の扱い指定です。左(off)が埋めない、右(on)が埋める指定です。
配線間隔信号線とポリゴンの間隔を指定します。DRC(Design Rule Check)またはNet Classで指定されている間隔より狭い場合、DRCまたはNet Classの大きい方の値が使用されます。デフォルトは0です。設定単位はインチ。
ハッチ間隔塗りの項目でハッチが指定されている場合、ハッチの間隔を指定します。設定単位はインチ。
優先 複数のポリゴンを重ねて描く場合、どちらのポリゴンを優先させるかを指定します。
数字が小さいほど優先度が高くなります。1が最優先ということです。

リンクしている項目は具体的な例で説明しています。

ポリゴンの設定はポリゴンを描く前に設定します。




ポリゴン領域の指定
ポリゴン設定が終わったあと、ポリゴンの描画に入ります。
今回の例ではポリゴン設定を以下のようにしています。
配線面:16 Bottom
曲げ角:設定0
配線幅:0.016
塗り:Solid(ベタ)
端子:on(残す)
余白:on(埋める)
配線間隔:0(デフォルト)
ハッチ間隔:0.05(塗りがSolidなので関係無し)
優先:1

また、パターンを見やすくするためにDisplayの 21 tPlace を off にして部品形状、名称等を非表示にしています。



ベタアースのポリゴンはプリント基板領域の外周に描きます。


基板領域の左上外側をクリックし、始点を設定します。
次にポインタを右下外側でクリックし、終点を設定します。

ポインタの移動中マウスボタンを押し続ける必要はありません。

赤丸印はクリックポイントを示します。








ポインタを左上の始点に移動し、クリックします。
これでポリゴン領域の設定が行われました。






ポリゴンの名称を設定します。これを行うことによりポリゴンが接地線と接続されます。


Nameボタンを押したあと、ポリゴン領域の外側をクリックし、接地線の名称を入れます。OKボタンを押すと右の図のように信号線の種類を聞いてきます。

GNDを選択します。












信号選択でOKボタンを押すとポリゴンが描かれます。
まだ、信号線のパターンは描かれていない状態ですが、信号線のパターンを描けば、ポリゴンは信号パターンを避けて自動的に描かれます。






信号パターンの作成
ここでは信号パターンの描画をAutoによる自動で行います。


今回の場合、Preferred Directions で 1 Top を N/A とし、Bottom(配線面)だけにパターンを描いています。

左の図をクリックすると拡大画面が表示されます。


ポリゴン表示の切り替え
ポリゴンの表示には2つのタイプがあります。アウトラインモードとリアルモードです。アウトラインモードは基板の周囲にポリゴンの枠だけが表示され、基板のなかにはポリゴンが描かれないモードです。これはパターンの変更などを行うときに便利です。もう一つのリアルモードは基板のなかにポリゴンが描かれるモードです。ポリゴンの状態を確認するのに便利です。

アウトラインモード

リアルモード

    アウトラインモードからリアルモードへの変更

アウトラインモードの時、Ratsnestボタンを押すとリアルモードに切り替わります。

    リアルモードからアウトラインモードへの変更

リアルモードの時にRipupボタンを押します。次に基板の外側をクリックするとアウトラインモードに切り替わります。
Ripupはパターンを元に戻す機能もあるので、2ステップの操作になります。

    モードを切り替えたあと、表示の色が黄色っぽくなる場合があります。この場合にはで再表示をさせればきれいになります。
    EAGLEのファイルにはアウトラインモードのデータのみ記録されています。リアルモードの表示はアウトラインのデータからCAMプロセッサで表示処理をさせています。RatsnestによりCAMプロセッサが起動され、リアルモード表示が行われます。プロジェクトをセーブしたあと閉じてから再び開くとアウトラインモードで表示されます。

信号パターンの修正
信号パターンを修正する場合にはアウトラインモードで行います。このほうがパターンが見やすいからです。リアルモードで修正することもできます。


ポリゴンは基板の周囲に描かれていて配線パターンの確認が容易に行えます。

具体的なパターンの修正方法は「パターンの修正」を参照してください。









配線の角を45度の角度にしてみました。













ポリゴンを再び描画させたい場合にはRatsnestボタンを使用します。

修正したパターンに沿ってポリゴンが描かれます。

完成です。

左の図をクリックすると拡大画面が表示されます。






ポリゴンの削除
ポリゴンの属性を変えるとか、ポリゴンの使用を止める場合、ポリゴンを削除する必要があります。ポリゴンを描画させると基板のなかにポリゴンがあるように見えますが、基板のなかのポリゴンは実体ではありません。ポリゴンのある位置は基板の外周です。ポリゴンの削除にはDeleteを使用します。


アウトラインモードで表示すると基板の周囲にポリゴンの線が現れます。これが実体です。
ポリゴンを削除ためには、この実体を削除する必要があります。













Deleteアイコンを押したあと、ポリゴンの実体の外側をクリックします。
これによりポリゴンの一部の辺が削除されます。

この状態でAutoをクリックすると三角形の領域のポリゴンが描かれます。
どうなるかと思って描いてみましたが、意味はありません。
ここで分かることはベタアース以外でも基板の特定の領域だけにポリゴンが描けるということです。











続けて反対側をクリックするとポリゴンが削除されます。

ポリゴン領域を形成するのには最低3辺が必要なので、三角形の1辺を削除するだけでポリゴン領域は消滅します。













配線幅 ( Width )
配線幅ではポリゴンを描く細かさが指定されます。ただ、細かなポリゴンを描いても実際のプリント基板を作る精度以上に細かくしても意味がありません。EAGLEのマニュアルでは通常の配線の太さにするべきと書かれています。
この配線幅はポリゴンの塗りをハッチにした場合の線の幅になります。

配線幅 : 0.016インチ

配線幅 : 0インチ


塗り ( Pour )
ポリゴンの塗りつぶし方の指定です。通常はベタ(Solid)を指定しますが、重量を軽くしたい(?)場合などにはハッチ(Hatch)を指定します。

ベタ(Solid)の場合

ハッチ(Hatch)の場合
ハッチ間隔 : 0.05mil


端子 ( Terminal )
接地端子とベタアースとの接続方法として2種類あります。端子とベタアースを一体にして形状を残さない方法と端子の形状を残しながら接続する方法です。端子の形状を残す方法の場合、四カ所で端子とベタアースが接続されます。はんだ付けを綺麗に行うのには端子の形状を残すほうが良いかも知れません。

端子の形状を残さない(off)設定

端子の形状を残す(on)設定


余白 ( Orphan )
回路パターンをベタアースのポリゴンで囲む場合、回路パターンの一部にベタアースポリゴンが描けない場合があります。描けない部分を他のポリゴンで埋めるか、埋めないかの指定です。余白に埋められたポリゴンはどこにも接続されていません。高周波回路の場合、余計な銅箔が回路動作に影響することがあります。そのような場合にはポリゴンで埋めないようにします。

余白をポリゴンで埋めない(off)設定

余白をポリゴンで埋める(on)設定


配線間隔 ( Isolate )
配線間隔はデフォルトでは0になっています。この場合、信号線とポリゴンはDRCまたはNetClassで指定されている大きい方の値で配線間隔が描かれます。DRCまたはNet Classで指定されている値以上を設定すると設定値が有効になります。
DRCでの配線間隔は 8mil ですが、Net ClassでGNDのClearanceを 16mil に設定しています。
分かりやすいように0.01インチ(10mil)間隔のハッチでポリゴンを描いています。

配線間隔 : 0インチ
Net Classの0.016インチが使用されている

配線間隔 : 0.024インチ(約0.6mm)


ハッチ間隔 ( Spacing )
ポリゴンをベタではなくハッチで描く場合のハッチ間隔を指定します。ハッチ間隔(Spacing)が配線幅(Width)より狭い場合、ハチングする線が重なるため、ベタと同じになってしまいます。

ハッチ間隔 : 0.05インチ

ハッチ間隔 : 0.1インチ


優先 ( Rank )
優先度指定で数字の少ないほうが優先度が高くなります。ポリゴンの重なっている部分は優先度の高いほうのポリゴンが描かれます。